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老舗と私 小倉屋 株式会社(昆布)
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小倉屋 株式会社(昆布)
創業嘉永元年(1848)163年の歴史を誇る<をぐら>屋は、大阪でも最も古く、かつ由緒ある昆布の老舗として広く知られている。
日本一の昆布どころ、北海道の真昆布を原料として、じっくりと煮込む大阪の伝統工法により、すぐれた塩コンブが生まれる。大阪戎橋筋のをぐら屋は<大阪名物いうたら、やっぱり昆布でっせ>と大阪の食文化に貢献している。
大阪の産物でもない昆布が大阪の名物になっているなんて、昆布以外にあまり類をみない。それほど昆布は大阪で大切にされており、昆布に各地名産の松茸、椎茸、山椒、かつお等、海の幸・山の幸の個性をいかしながら、様々な嗜好の昆布をつくり続けてきた。
昆布は「喜ぶ」に通じることから、古来縁起の良いものとされ、正月の鏡餅のお飾りに、また結納の際の不可欠のものとして使われたり、お祝い事の引き出物などに重宝されている。
昆布の旨味は日本の味の代表の一つであり、他の食料の味を引き出したり、あらゆる食文化の根源になっている。昆布を通して、日本文化を感じ、そして新しい日本人の味、大阪人の食道楽を創造してゆくのに、やはり昆布は大切な役割を果たしている。おまけに栄養豊富で縁起物の大阪名物である。
昆布は、ビタミン。食物繊維が豊富で、それ以上にヨードやアルギン酸等のミネラルが豊富で、カルシュウムは牛乳の7倍、鉄分は39倍もあり、健康・美容にもしっかりと役立っている。
幼いころ、母の手伝いで、昆布を一口大の大きさに丁寧にハサミで切って、一晩水に漬けこみ、根よく昆布を煮込み、焦げ付かないようにゆっくりと長い箸で混ぜながら火の番をするのが、私の役目であった。はじめはとてもイヤであったが、姉がよく、焦げ付かせて叱られていたが、わたしがやれば、不思議と上手くやるので、母に褒められれば嬉しくて、色々工夫をして、万弁なく火がゆくように、箸よりもおしゃもじ、それもご飯用だと手が熱いので、なるべく大きな、料理人が使うしゃもじを買ってもらって、自分の気のすむまで煮込んだ。小さい弟たちが、少し噛むだけで、スルット喉を通過出来るように柔らかく煮るのが苦にならなくなった。  
長じてそんな時間も余裕がなく、市販の塩コンブを買っていたが、ある時、<をぐら昆布>をいただいた。煮くずれしない美しい形を重厚に保ち、光沢を品良く放ち、口にすれば絶品。とたんに幼い頃の<私の塩コンブ>を思い出した。<をぐら屋>が伝統と、技術で丹念に煮た<食品の芸術>と感じさせる昆布から、つくる人たちの「心」がひしひしと伝わって、手に取るようによみとれたのである。出来栄えこそ違っても、弟の為に一生懸命につくった「心」と通じるものを感じ、忘れていた大切なものを思い出させてくれたのである。

梶 康子
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